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サホロの夜
(2007/07/13)
こんなに手入れをした自然もきれいなものだ。スキー場らしい山のウネウネがきれいな緑色に覆われている。父さんが絶賛する「手付かずの自然」に少々困っていたぼく達は,この「手入れた自然」が気に入った。
ホテルは夜遅くまで音楽を聴きながらお酒を飲む大人たちでごったがえしてる。ガラスの窓から見えるサッカーグラウンドは,学校のとは違ってきれいな芝生に覆われている。夜は照明があたってますます緑が鮮やかに見える。ゴールだって白いペンキがきちんと塗ってあって,錆なんか見えない。
大人たちをおいてぼくは外へ出てみたくなった。出口がよくわからないので,通りがかった係りの人に聞いた。英語みたいな言葉をしゃべった。手振りで外へ出たいと一生懸命説明したら,「おお」と行って玄関へ連れて行ってくれた。その人が自分の名前を言ったような気がしたので,ぼくも大きな声でぼくの名前を言った。係りの人は大笑いして行ってしまった。そう,気持ちがあれば通じるんだ。
外はひんやりと気持ちよかった。でも出たとたんに照明が消されてしまって,サッカー場は真っ暗になった。ぼくは驚いた。突然暗くなったからじゃない。空に驚いた。真っ黒な空に星がいっぱいいっぱい浮かんでいる。空の真ん中を白っぽい筋が流れている。これは……
「天の川さ」いつのまにかサッカー場の真ん中で下半身デブのおじさん(まるで絵本にでてくる王様のようなデブ)が言った。いつの間に来たんだろう。「あれが彦星でもうちょっと上に天の川をまたいで織姫」おじさんは七夕の織姫と彦星を教えてくれた。
ぼくは大急ぎで戻って,みんなを連れてきた。急がなくたって星はいなくなるはずはないんだが,とにかくぼくは急いだ。デブの王様はまだいて,同じように教えてくれえた。ぼくたちは北斗七星のように並んでじっと空をみあげていた。「あ,流れ星」「どこにどこに」ぼくは見ることはできなかったが,お父さんお母さんぼくと妹とそれからみんながいつまでも病気しないで元気でと急いで祈った。お祈りは長すぎたけど,通じただろうか。
「お兄ちゃん,もう寒いから」と妹が言うのでぼく達はホテルへ戻った。ふと振り返ってみるとデブの王様はいなくなっていた。いつ,いなくなったのだろうか。