毎年12月に函館赤レンガ倉庫群で行われる幻想的なイベントが函館クリスマスファンタジーと呼ばれて人気を呼んでいる。呼び物は、カナダの姉妹都市より寄贈された巨大なもみの木にイルミネーションを飾り付けての点灯式。点灯されたクリスマスツリーは幻想的で非常に美しい。JR北海道はこのイベントに合わせて、毎年オプショナルツアーを企画している。
20周年を迎えるJR北海道が企画した今年のツアーは、B寝台2両と座席車2両の4両編成となる急行大雪を、往路は小樽経由で『リバイバル急行大雪号』として、復路は苫小牧経由で『JR20周年号』としての列車の旅。往年に活躍した『急行大雪号』に乗って、網走、函館間を1泊2日で往復し、宿泊地の函館でクリスマス気分とついでに世界的な夜景を楽しもうというもの。
実は私、昨年と今年と2度目の参加である。と言っても目的は観光ではなく、列車内でのイベントライブを行うため。それでも2日間をつぶして函館に行くのだから、あの手この手で旅行を楽しもうと色々下調べをしたりするんだなー。ただで行ってもただ帰ってはこない。
今回は、網走を11月30日午後8時40分に出発、最終函館に12月1日午後1時30分着なので、観光スポットも楽しめそうだ。ただし旭川発は1日の早朝3時30分ですって。函館って遠いんですね…。何でも簡単に引き受けるものではないとちょっと後悔。
2月1日午前3時。旭川駅に妻と相棒の3人で降り立った。当然3人とも睡眠は取っていない。車は旭川駅パーク&トレインを利用した。(JRの宣伝ではありません。)列車はすでに2時過ぎに旭川駅に到着しており、旭川駅では約1時間30分程の停車となっている。乗客は皆さん熟睡中であるから、長時間の停車は気にならないと思うが、特別列車でなきゃあり得ない停車時間だ。
早速このツアーの企画者である、JRの勝又さんと打ち合わせ。なんと、私達が、ぎりぎりまで態度をはっきりしなかったため、当日分の朝食と昼食の駅弁が用意できなかったとの事、朝食は旭川で、昼食は長万部で自前で調達してほしいと言われた。『えー、汽車の旅は駅弁でしょ』『弁当自前ですか?』と心の中でぼやきつつも、もたもたしている時間も無く、慌ててコンビニへ走る。しかし、駅に近いRコンビニさんは、弁当が売り切れ。パンでも良かったのだが、久し振りの列車の旅だから、何故か弁当にこだわり、次のコンビニへ疾走。3条通りにあるSコンビニさんで運良く弁当を調達。『弁当が自前?』釈然としないまま慌て列車に飛び乗った。
すでにほとんどのベットはカーテンが閉められている。安眠の邪魔にならないように、ヒソヒソと打ち合わせしながら、僕は上段のベットへ。ギターやバックを収めてほっと一息ついてカーテン越しに車窓を眺めると、すでに列車はホームを滑り出していた。
備え付けの寝巻きに着替えベッドに横になる。列車の揺れに身を任せていると、学生時代に利用した大阪発青森行き寝台特急日本海の旅を思い出した。先輩、後輩と楽しい旅をしてたなー。いや、決して旅好きであちこち旅をしていたのではなく、飛行機で帰郷するお金が無かっただけなのだが…。いや、かえって列車の旅の方が色々と掛かるんだよ。
大阪で駅弁を3食分とビールを買って、晩飯、夜食。朝食。大阪を午後8時代に出発し、青森には翌日のお昼頃到着。青森に着いたら、ホームから連絡船の桟橋まで走り普通船室桟敷席を確保したっけ。空いている時は横になれるのでとても楽だった。出港時に鳴らされる銅鑼の音、桟橋に流れる『津軽海峡冬景色』は郷愁をさそわれたもんだ。
連絡船の楽しみはデッキからの津軽海峡の眺めと、もの珍しい船内を見て回る事。シャワー室を1度だけ利用したが、水圧が高くとても痛かったのを憶えている。目新しいものは一度は体験しないと気が済まない性格が災いしている。連絡船内の食堂もそうなのだ、船の中での食事に魅力を感じるのだ。食事をしている人を見ると皆、美味しそうに、楽しそうに食事をしているように見えたのだ。確かに食堂で船の揺れを感じながらの食事もおつなものだった。特別美味しくは無かったけど。
函館に降り立つと特急北斗で札幌へ。函館から旭川までは、もう所持金も尽きてしまい、ひたすら我慢するしかなかったなー。懐かしいなー。大阪からはおおよそ25時間の楽しい旅だった。
さて、そんな思い出に包まれながら、列車は6時頃に札幌駅のホームへ滑り込んだ。列車の中はとても暑い。なかなか快適な室温にならないのも、昔のままだ。今の思い出は夢の中だったのか、はっきりしない意識の中で列車はほんの数分で小樽へ向け、ホームをすべり出した。小樽には6時30分頃到着予定だ。『次は小樽か、そろそろ夜明けだな、海から登る太陽が見れるかも知れない。』と思ったとたんに眼が覚めてきた。慌てて服に着替え、デジカメを鷲掴みにして、ベッドをそろりと抜け出した。寝台車の窓は全てブラインドが降りている。ブラインドを上げると乗客に迷惑がかかると思い、揺れる通路から、2つ並ぶ洗面台を通り過ぎ、2号車と3号車のデッキへ移動した。しかしドアの窓から見える景色は残念ながら曇り空、
そのままチャンスを待っているうちに列車は小樽駅へ滑り込む。停車時間は13分。小樽駅の雰囲気を味わおうとホームに降り写真を撮った。さすがに、旅人の朝は早い。外が明るくなると目が覚める。中には相棒のように9時過ぎまで熟睡される方もいたが…。雪が少ない。積もっていない。旭川とは大違いだ。続く