桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている!
これは信じていいことなんだよ。何故(なぜ)って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。
これは梶井基次郎の「桜の樹(き)の下には」の書き出しです。(
青空文庫)この時期になると開花を待ってそわそわしながらこの一節を思い出します。狂おしいばかりの
桜の森の満開の下に行きたいものだと思っておりますが、残念ながら道北の桜は山桜ばかりで狂おしい気持にはなりきれません。上野の喧騒をニュースで見るたびに、馬鹿だなと言いながら内心はうらやましく思っております。
それでももうすぐ旭川にも桜の季節がやってきます。旭川周辺の桜スポットを並べてみました。少しだけ、狂おしくなってみませんか。
ああ、桜の樹の下には屍体が埋まっている!
いったいどこから浮かんで来た空想かさっぱり見当のつかない屍体が、いまはまるで桜の樹と一つになって、どんなに頭を振っても離れてゆこうとはしない。
今こそ俺は、あの桜の樹の下で酒宴をひらいている村人たちと同じ権利で、花見の酒が呑(の)めそうな気がする。
神楽岡公園 |
酒宴を開く一番のスポットのようです。そういう意味ではごちゃごちゃしています。 | |
旭山公園 |
酒宴も開かれていますが、東旭川商工会の夜桜まつりが好評です。旭山動物園の目と鼻の先です。以前は神居古譚と二大お花見スポットだったようです。 | |
常磐公園 |
酒宴は禁止されているのでしょうか。静かにお弁当を広げて陽だまりに佇む最高のスポットです。残念ながら夜桜のライトアップはありません。あると絶好のデートスポットになるのですが。それより護国神社祭の準備が忙しくなります。 | |
神居古譚 |
汽車に乗って神居古譚駅で下車、駅舎下の桜を愛でるのが30年代の行楽だったようです。 | |
男山公園 |
今ではカタクリの方が有名。食堂も遊園地も閉業して大きな桜の木がひっそりと立っています。 | |
キトウシ森林公園 |
東川町キトウシ山の麓に地元の若人が植林した桜の林が花を咲かせます。4月下旬はカタクリ、エゾエンゴサクの群生も見られます。 | |
聖台ダム |
美瑛町の大きな水源地の一つ。池の周辺に桜が咲き誇ります。 | |
東大演習林 |
富良野市の東大演習林脇の国道沿いに桜並木があり、見物客で賑わいます。ただ、桜並木の中に幟がはためくのが残念。 | |
朝日ヶ丘公園 |
富良野市内から新富良野プリンスホテルへ行く道路の傍らの山が桜で覆われます。 | |
白金温泉 |
最後に白金温泉。日本最後の桜開花は旭岳温泉ですが、美瑛町白金温泉も5月下旬から6月上旬の開花です。 | |
蛇足
坂口安吾「桜の森の満開の下」は別の作品です。死体も登場しますが。実は私はずっと混同しておりました。(
青空文庫)