今日は2月3日,節分だ。ということは明日は立春だ。なのに,凍(しば)れた。自宅の温度計では昨日零下16度今日は12度。朝陽が昇るのは早くなってきたので,もうひと月もすると春らしい日を迎えるだろう。会社では季節ごとにささやかなおやつが出るが,今日は落花生に
旭豆だ。
落花生を節分にまくという北海道独特の慣習はよくテレビなどで取り上げられるので,道産子は本州と違うことに驚き,本州の人は道民の合理性に驚くという構図になっている。
旭豆は落花生の様に殻に入っていないので,同様にまくわけにはいかないせいか,節分に使われるということは聞かない。だが,旭川名菓をこの機会に購入してみた。1軒だけかろうじて残ったデパートの地下では残念ながらみつからなかった。はっか樹氷はあったが,確か北見名菓だ。
JR旭川駅で土産物を扱っているキヨスクで入手。箱の中は個袋包装になっており,年の数だけと思って数えるといい数だ。
数年前に高校の同窓会で,ある先輩に出会った。旧制中学時代に卒業したという細身の精悍な感じのご老人だ。東京の子供のもとに身を寄せることになり,同窓会もこれが最後だと,当時のアルバムを持参していた。今日集まる同窓生とこれを肴にするつもりだという。戦後の混乱期にあって,卒業アルバムは作ってなかったので後年同期生で作ったものだという。白黒の写真の中には学生服に腰手ぬぐい,丸い黒縁の眼鏡の当時の若々しい姿が納まっていた。
旭川に住んでいる私に,こんなエピソードを話してくれた。
開発局に勤めていたときに,時の開発庁長官中川一郎に目をかけられ,東京で秘書官を務めていたことがある。中川昭一はまだ小学生だったかな。ある日,お付きの女性たちの部屋からぼりぼりぼりぼり音がするので,どうしたのかなと行ってみると,女性たちが集まって豆のようなものを食べている。中川一郎がおやつにと送ってくれたそうだ。それが,旭川の旭豆だった。中川一郎は一斗缶で送ってよこしたのだという。一斗缶というのは10升入る四角い缶のことで,お菓子を問屋が販売するのに使っていたものだ。多分20キロはあるだろう。とてつもない量で,中川一郎の大様な性格が伺われる。それからしばらくその部屋からぼりぼりぼりぼり音が聞こえたそうだ。
名菓といえども,忘れられがちなものを守り,作り続けるのはたいへんなことだろうと思う。新しいものに目を奪われることが多いので,今日はゆったりとした気分でぼりぼりと味わうことにしよう。今度はボンゴ豆だな。あれも旭川だったな,確か。
この文章はメイリオをインストールしたパソコンではメイリオで表示します。私にはとても見やすい書体です。ただし,字体はVISTAと同じくJIS2004です。「飴」が旧字体になっておいしくなさそう!
(嶋福朗記者)