旭川の誇るべき道路、買物公園が誕生40周年です。おめでとうございます。下の写真はフォト旭川市民という題名の市民広報です。旭川市自治活動部広報課発行となっています。
まるでおまつりです。お祭り騒ぎです。それもそのはず、これは誕生2年前の「実験」なんです。この成功に意を強くした時の五十嵐市長がいよいよ2年後、歩行者専用道路「買物公園」を誕生させるのです。
とは言っても、私は旭川に無く、社会の混乱を眺めていた一介の受験生にすぎません。社会の混乱というのはベトナム反戦運動や大学紛争、東大安田講堂が陥落したのが1969年1月18日、旭川だって高専封鎖解除に機動隊が投入されたという。そんな中で車社会の弊害を訴え、人間らしさを求めて歩行者専用道路を作った当時の旭川市民の気概を、当時の私が知るはずがありません。
フォト旭川市民1969.9の市長のエッセイに
各関係官庁のかたはいづれもこの試みはとても認め難いという発言の内容で、会場の商店側出席者は「やはりだめか」という落胆の空気が濃かった。私は物事のスタートはこうしたものだ。これからですと言葉を強めて励ましたのであった。が最後に山本組合長が立ってあいさつを述べた中で、次のようなことを言った。
『昔、士農工商という言葉があったが、今そんな言葉のあろうはずがない。しかし私はこの会議で、その言葉が今日も生きているのかと痛感した。』この言葉は出席者の肺腑(はいふ)をえぐり、会場は静まり返った。
そして次の日から、猛烈な運動が展開された。
と。往時の強い意思と勢いを感じます。
さて5月26日道新旭川支社・
旭川ウェルビーイングコンソーシアム共催の「買物公園のあした〜誕生40年」という講演・発表・パネルディスカッションを聴いて来ました。鳴海邦碩阪大名誉教授(都市計画)の講演、旭川大学江口ゼミのフィールドワークの報告、そして西川将人市長や鳥居幸廣平和通商店街振興組合理事長を交えてのディスカッションでしたが、発表者の中に買物公園と40年共にした人が一人もいませんでした。現在から未来へと住み続けるので、ディスカッションに参加するのに何も問題はありませんが、このフォーラムからは往時の意気込みや熱情を知ることができませんでした。
それは十歩置いて、現状分析は旭川大学生のレポートに期待しました。実際に営業している店舗を足で調べたという力作です。ただ経営学のゼミのせいか、店舗経営者側の視点でしかありませんでした。老舗や旨い店やブランドショップもいいのですが、「どうして買物公園に来ているのか」郊外店に行って「どうして買物公園に行かないのか」を調査して欲しいと思います。
共通認識としての問題点は、郊外店の台頭、中心街大型店舗の衰退、無料駐車場問題があります。駐車場はラクラクチケットという共通の駐車券を買い物客に提供するサービスを実施していると説明。それは知りませんでした。けど、郊外店は買わなくても無料です。せっかく来たのに買物ができなかったひとにも無料券を配ったほうがいいのでは。ウィンドウショッピング歓迎、お代は見てのお帰りです。
郊外大型店の良さのひとつはテナントの集中です。夏に向けて洋服をと思った時に、テナントが集中的に配置されている大型ショッピングモールは魅力的です。買物公園でも婦人服ゾーンとか趣味雑貨ゾーンとか出店をコントロールしてはどうでしょうか。既存店はそのままでも、目的ゾーンがあるので出かけたくなります。ゾーン内で飽きたらないときはゾーン外の既存店に足を向けるでしょう。それと同行する家族のためのゾーンもあるといいと思います。お父さんの趣味のためのゾーン、子供を遊ばせるゾーンなどが隣接するとお互いゆっくり楽しめます。
中心街の大型店の衰退が一番の問題、なら無料駐車券や電気バスでは凌げないのではないですか。
旭川市は来るべき人口減少時代に向けて、コンパクトシティ構想を提唱しています。行政の質を維持しながら効率的なサービス提供を目指しています。そのためにサービスの必要な人は中心市街地に居住していだだくのがいいということです。行政の都合のようですが、そのことで中心市街地が活性化するとまた面白いことになります。現在でも平日の買物公園は高齢の方を多くみかけます。彼ら彼女らを大事にする買物公園になってはいかがでしょう。路面にバナナ焼きやお焼屋があって、近くの路上に腰掛ける場所が日陰にさりげなくある風景はいいですね。それと高齢者は自転車通行可、制限時速4キロ(遠足の速さ)で。北の
巣鴨、北のおばあちゃんの原宿を作れないでしょうか。
大学院生時代に旭川買物公園の構想案を書いたという鳴海氏は、空き店舗や空き地ができたら見せないで埋めるための機構が必要と言っていました。ペイントした壁で囲ってしまうなどのことを言っているのだと思います。賑やかさ楽しさを演じる必要があります。阻害状況は一時的に覆ってしまうのです。空き店舗や空き地は覆うことを条例で決めて下さい。そこの壁に買物公園の意気込み、アート、大道販売、ここにあった建物の写真なんかどうでしょうね。使えるのなら一時的な店舗として借りると、アンテナショップになります。
冬まつりの帰り、買物公園から覗く
また、鳴海氏は小路に何かあるぞと思わせる大通りが楽しいと言っていました。そういえば人の集まる有名な道路には小路の奥に変わった店があるのを見かけます。あれ何? と思わせ、こっそり覗いたり、思いきって入ってみたりするようです。既存店に頼らない公園づくりも求められます。
また、このフォーラムでは話題になりませんでしたが、三六街、特に地場産品を提供する居酒屋とのコラボも可能ではないでしょうか。旭川の居酒屋の質は北海道一だと思います。近頃は家族で車に乗って居酒屋に行くことも多いと聞いています。デパート食堂から居酒屋へ。
東京浅草の屋台通りは小路とは言えないスケールと賑わい。
これを買物公園の脇にとはいいませんが。
買物公園に買物とつくのだから買物をしなければならないというわけではありません。公園はくつろいだり、楽しんだりするところです。税金を投じているのもそのためだろうと思います。自分たちの店の為だけでなく市民が集える場所になってほしいのです。オープン時の市民の意気込みを感じ、道路をのんびり、あたりを見渡しながら友人とおしゃべり歩きする空間になってほしいのです。車を排し、人間らしさを求めた時のことを忘れずに。
この文章はメイリオをインストールしたパソコンではメイリオで表示します。私にはとても見やすい書体です。ただし,字体はVISTAと同じくJIS2004です。「飴」が旧字体になっておいしくなさそう!
(嶋福朗記者)