5月2日木曜日、午前9時過ぎの仙台空港とその周辺は、少しだけ震災の傷跡を残してはいるものの、ほぼ元の姿に戻っているようでした。
初めての春の東北、初夏を思わせる陽ざしの中を妻と2人、カーナビと標識を頼りに見知らぬ街の中を走り抜け、東北自動車道仙台南ICへ向かいます。妻は右に左にキョロキョロと北海道とは違う家並みを楽しんでいました。
この時期の東北自動車道は、交通量が多くゆったり走れません。宮城県、福島県を走り一路栃木県那須ICへ向かいます。途中福島県国見SAと栃木県那須高原SAで休憩しましたが、充実した施設と品ぞろえの多さ、人の多さに驚きました。桜の季節は終わりに近づいてましたが、若草色や萌葱色の中に咲く桜は、道中の心を和ませてくれました。広葉樹の多い東北の春の色はとても優しい色です。
那須ICで高速を降り那須街道へ、道の駅那須友愛の森では、伝統工芸の芦野石細工や那須の篠(しの)工芸品を見る事が出来ます。篠は自生する笹の一種「シノダケ」です。篠を使ってザルやカゴなどの生活用品作りが盛んに行われ、冬場の収入源となっていたそうです。
更に進んでいくと、色々な看板が道端に立っております。ホテルにペンション、戦争博物館や那須野牧場、ジャム工房にレストラン、美術館や教会にゴルフ場にスキー場と伝統工芸とは対照的な都会的な雰囲気が漂います。那須の御用邸もこの近くにあるはず。
目的地の那須湯本温泉の民宿小林館に到着。栃木訛りのご夫婦が出迎えてくれます。ここで長男と落ち合いました。
那須湯本温泉は、聖武天皇の時代から記録が残り、江戸時代の「温泉番付」では「東の関脇」とトップクラスの人気を誇り、松尾芭蕉さんも句を残すほど有名な湯治場でした。そんなに有名な温泉地とは全く知らず、勉強不足でした。
ご主人が「近くに有名な鹿の湯があるけど、先日テレビ放映があったから、今は混んでいて落ち着かない。小さいけど直ぐ近くの滝の湯も同じ泉質だから、滝の湯がお勧めだよ。」
那須湯本温泉滝の湯
滝の湯は、地元の人と民宿宿泊者だけが利用できる通い湯です。電子キーを借りて息子と2人下駄を鳴らして行ってみると、木造のいい感じの建物。浴槽は二つに仕切られているが、一つは熱くて入れない。どちらの浴槽も白濁した湯で満たされています。かなり硫黄臭が強い湯ですが、実に気持ち良い。さて体を洗おうかと辺りを見回すと洗い場が無い…。
そのうち地元の方が入って来て教えてくれました。「俺らは、体を洗わないよ。湯に浸かって上がるだけ。どうしても洗いたいなら、あそこの上がり湯で洗うといいよ。」と言って上がっちゃいました。結局頭を洗い地元の人を真似て上がり湯を浴びずに滝の湯を出ましたが、硫黄の匂いがするものの寝るまで気持ち良さが残り、妻と息子とで楽しい夜を過ごしました。栃木の酒は旨かったー。
翌日早朝、誰もいない湯浴みを楽しもうと滝の湯へ、一人っきりの湯浴みを楽しんでいると全身刺青の体格の良い男性がのしのしと私と同じ浴槽に入ってきました。続けてまた一人。狭い浴槽に3人は厳しい。まして刺青男性2人とは一緒に入れんべ。「おはようございます。では、お先に」「おはようございます。すんまへんな。」「ごゆっくり」「おおきに」その日1日爽やかな気持ちになれました。
小林館で朝食後、福島県南会津郡の旧宿場、大内宿へ。(続く)
この文章はメイリオをインストールしたパソコンではメイリオで表示します。私にはとても見やすい書体です。ただし,字体はVISTAと同じくJIS2004です。「飴」が旧字体になっておいしくなさそう!
(おさらっべのカワセミ記者)