校正記号これだけ知ってると大丈夫
印刷に校正はつきものです。校正は原稿と校正刷りを対照し,誤りを修正指示したり,組版を修正指示したりする作業です。原稿の誤りを訂正する機会でもあります。(推敲する機会ではありません。)
出版社を介さない町の印刷物は著者や発注者が校正してその内容に責任を負うことになります。また,印刷所に出すものでなくても文章の推敲や点検をする機会は多いものです。画面の上でただちに直せることもありますが,紙に一旦プリントして加筆するほうが考えがまとまりやすいこともあります。
校正記号はこれを簡便に正確に記述する便利な記号です。印刷物校正には是非使用してください。
校正記号もJISZ 8208で2007年に改正がありました。より明確に幅の広い指示の仕方が認められています。記入しやすくかつ間違いを誘発しない書き方を考えて見ます。
記入は赤ボールペンで。
鉛筆や黒のボールペンは不適当です。
赤ダマートやクレヨンのような太さのあるものも不適当,蛍光マーカーのような薄いものも不適当です。赤のボールペンが最適です。
修正されるべき文字を明確にして右上に引き出して近くの余白に記入
どの文字を直すかを明確に。JISでは1文字のとき斜線を上書きするのが本則になりましたが,丸で囲むのもいいと思います。元の文字が読めないくらい塗りつぶすのは不可です。ホワイトで消して上から書き込むのも不可です。どれを直すのかわからなくなります。2文字以上のときは最初と終わりの文字に斜線を上書きして間の文字を横線で上書きします。または文字列を囲みます。
濁点が抜けてるからといって濁点だけを記入するのは不可です。引き出し線が長すぎないように,交差しないように記入します。
修正指示を取り消すのは元の位置の近くの余白に「イキ」と書き込み,修正内容を線で上書きし取り消します。
文字の削除はトル
不要な文字があるときは文字の修正と同じように引き出して「トル」と記入します。文字の上に線を上書きしただけでは削除していいのか迷います。校正指示は原則としてカタカナで記入します。トルは通常後の文字が追い込まれます。明けたままにしたいときは,「トルアキ」と書き込みます。紛らわしい場合には添え書きしてください。たとえばブリスターをブリストルに直したいときはトルと記入せずにブリスター全体をブリストルと修正指示したほうが確実です。
文字を挿入
文字を挿入するときは挿入する位置にyのように線を記入して,挿入する文字を余白に書き込みます。句読点を挿入するときもわかりやすいように<を付けて記入します。中黒は□で囲みます。コロンは丸で囲みます。ギリシャ文字はギなどと注釈をつけます。
改段と改行
段落改行(略して改段)は行を変えて更に段落始まりの字下がりをします。通常は1字下げることになります。欧文などダブルスペースで本文を組んでいるときは全角スペースを2字分行頭に入れて字下げをします。字下げをしていない組版では字下げはしません。改行はどの場合も段落始まりの字下げはしません。指定範囲内の字下がりをしているときは,他の行に揃います。改行してその行だけ字下がりを解除するときは行の移動┣を併せて指示します。
改行をやめて前行に続けるときは行頭字下げのスペースは削除して続けます。
文字位置の修正
文字位置の修正指定は右のように使います。
字間や行間を広げる,詰める―紛らわしい指示は丸囲み
空き量等を表現するには1文字の大きさを基準に表現します。1文字分は全角,1/2文字分は二分(にぶんまたはにぶ),1/3文字分は三分(さんぶ),1/4文字分は四分(しぶんまたはしぶ)と表現します。字間や行間がない状態をベタと言います。字間がひろがっているのを通常の字間にするには字間ベタと記入します。半字分あけたいときは二分アキと記入します。これは本文なら本文文字の大きさ,見出しなら見出しの大きさが基準になります。
文字を入れ替える
文字を入れ替えるのは次のように記入します。文字をくるむように記入します。
書体の指定
書体の指定は右のように指定して,明朝体にするには「ミン」ゴシック体にするには「ゴシ」などと記入します。JISではゴチとなっていますがゴシック体を呉竹体と当てたことによる名残です。欧文は明朝体に該当するのは「ローマン」斜体は「イタ」とします。ゴシック体に相当するのは「ボールド」ですが,日本語のゴシックのような特殊な書体を使うこともあります。MやGは色名と紛らわしいので使わないことになりました。
特殊な書体は書体名を記入することになります。
拗音や撥音や添え字
拗音や撥音や添え字(上付き,下付き)に直すのは右のように記入します。わかりずらくなった時は丸囲みで上付き,下付き,大きくなどと添え書きしてください。
大文字小文字の変更
大文字小文字の変更は右のようにします。下線3本をひく指定もありますがこちらの方がよく分かります。ローマンやイタリック,ボールドといった欧文特有の指定は多くなるとたいへんです。下線1本ならイタリックへ,上線ならローマンへ波下線ならボールドへ変更する指定とJISでは定めています。この指定を使ったときはページ上に「 はイタリック」と記入していただくと,JIS規定に則って記入していることがわかります。
ルビ(振り仮名)の追加
ルビ(振り仮名)の追加は次のようにします。
このほかにも記号がありますが,校正記号を使わなければならないというわけではありません。できるだけ簡潔にかつ適切に指示記入できる記号として活用してください。また,校正記号は編集記号としても使います。下書きしたワープロのプリントに訂正を入れたり,添え字の注意をしたり,見出しや書体を指定したりします。下書きしたテキストファイルと編集指定したプリントを併せて印刷所に入稿すると最適です。
このページはメイリオをインストールしたパソコンではメイリオで表示します。私にはとても見やすい書体です。ただし,字体はVISTAと同じくJIS2004です。「飴」が旧字体になって苦そう!