今はテープ起こしという呼び名が一般的ですが,当時はデクテーションとかテープ解読とか呼ばれていたこともありました。専用のテープレコーダーはメモスクライバーという商品名でした。テープスピードは勿論可変ですが,それよりテープを一次停止すると設定した秒数分テープが戻されるのです。再生を再開すると数秒前から再生される仕組みです。一時停止はフットスイッチを使いました。昭和60年頃は,語学用にICメモリーが付いたテープレコーダーを買ってきて,エレキ用のフットスイッチを付けて使いましたが,当時のICメモリーは聞きづらかったように思います。今ならパソコンでできますね。
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藤本勝巳氏著 |
テープリライト株式会社の代の藤村勝巳氏は口語文語変換などの整理を含めてテープリライトという会社名を付けました。平成4年頃日本記録業協会設立の新聞記事を見て,東京・神田の同社を尋ねて教えを請いました。神田が初めての私にしかも地下鉄で来いと,丁寧に道順を教えていただきました。藤本氏は初対面だったにも拘わらず,テープ起こしの方法,課題を手取り足取り教えてくださり,あいわプリントのテープ起こしの礎となりました。その後ご無沙汰しておりますが,改めてお礼申し上げます。専用テープレコーダーのことも藤本氏に教わりました。旭川に帰って早速業者に取り寄せてもらいましたが,「こういうものがあるんですね」と業者に感心されました。
あいわプリントのテープ起こしは純粋にテープを起こし,文体も変えず,聞き取れないところは伏字を打ち,素のテキストデータを納めるものです。顧客はそのデータを加工し,原稿になり,当社に入稿する「筈」でした。
1時間の講演を起こすのに最初は15時間くらいかかっていました。価格を字数(約2万字)から3万円に設定しましたが,直に競争が起こり,今では通常の録音で2万円くらいになっています。これでも1文字1円にしかならないので,請け負う仕事としては手書き原稿を打ち直したほうがワープロオペレーターは楽かもしれません。
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M式ワープロユーザー会誌 |
当時あいわプリントは
M式ワープロNEC文豪5Vを入力に使っていました。ローマ字入力なのですが,右手に子音,左手に母音が配列されています。母音は2列になっていて漢字変換されるキーと直接かな入力するキーとが上下に分かれています。また旨い具合にキーにローマ字2文字が割り振られていて小気味よく入力できました。あいさつを[ai][s][at][u]と4タッチでタイプします。あいさつならかな入力と同じタッチ数ですが,しゃちょうは[sy][a][ty][ou]と4タッチです。残念ながら他の日本語入力方式とともに消えてしまいました。